180-衆-農林水産委員会-1号 平成24年03月06日 ○鹿野国務大臣 農林水産委員会の開催に当たりまして、委員長のお許しをいただき、所管大臣として所信の一端を申し述べます。  昨年来、東日本大震災を初め、集中豪雨や台風、大雪などの災害に見舞われ、農林水産業への被害が相次ぎました。大震災に伴う原子力発電所事故による被害もいまだ続いております。災害で亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に改めて心よりお見舞い申し上げます。  本年は、東日本大震災からの本格的な復興、原発事故からの復旧復興を進めることが最大、最優先の課題です。これらの復旧復興に向けた取り組みを進めるため、昨年成立しました第三次補正予算に加え、平成二十四年度の当初予算案においても必要な予算額を確保することとしております。  本年は、これらの予算を現地において着実に活用し、復旧復興に向けたつち音を確実に響かせなければならないと考えております。被災地の状況をしっかりと捉まえ、被災された皆様とともに復旧復興に取り組んでまいります。  その際、津波の被害や原発事故によって、長年にわたって耕してきた農地、育んできた森林、培ってきた漁場などが使えなくなっている人たちの思いをしっかりと受けとめなければなりません。一日も早く農業、林業、水産業を再開でき、日常の暮らしを取り戻せるように取り組まなければならないとの思いを新たにいたしております。  大震災を契機に、食料を供給する農林水産業が国民生活にとっていかに重要であるかが再認識されました。政府としましても重く受けとめており、農林水産行政を担当する閣僚として緊張感を新たにいたしております。食と農林漁業の再生を早急に実現し、活力に満ちた魅力ある農林水産業をつくります。このことが我が国の新たな光を生み出すことにつながるものと確信しています。  このような思いから、昨年十月には、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画を取りまとめ、必要な施策を五年間で集中展開することといたしました。このため、平成二十四年度当初予算案においても思い切った予算を盛り込んでおります。  以下、主要な農林水産政策について申し述べます。  第一に、震災からの復興であります。  現場主義に立ち、農地、農業用施設や漁港、漁場、養殖場、漁船、加工施設や市場などの復旧復興、農林水産業の経営再開の支援、海岸防災林の復旧、再生等を進めてまいります。市町村の本格的な復興計画の策定も進んでまいりました。農林水産省として、その実現に向けて支援を行い、一日も早い被災地域の復旧復興を進めてまいります。  また、原発事故の対応として、福島県飯舘村、川俣町での農地や、福島県郡山市、広野町での森林の除染技術に関する実証試験を行い、その結果などから得られた有効な取り組みを着実に現場に導入します。また、実証結果を技術指針として取りまとめ、環境省に提供します。これらにより、汚染された農地、森林の除染を進めてまいります。  今回の原発事故は、我が国の食品の安全、安心に大きな影響を与えたところであり、我が国の農林水産物、食品に対する消費者からの信頼回復や国際的な信認の回復が不可欠となっています。農林水産省は、関係機関と緊密に連携しながら、食品衛生法の暫定規制値を超えるものは流通させないことを旨として取り組んでおります。  特に、二十四年産の米については、二月二十八日に公表した二十四年産稲の作付に関する方針に基づき、具体的な作付制限区域等、地域ごとの作付の取り扱いを早急に決めてまいります。また、二十三年産でキロ当たり百ベクレルを超える放射性セシウムを含む米については、昨年末に公表した特別隔離対策の方針に沿って、早急に隔離の実施を具体化してまいります。また、生産段階における農林水産物、食品の検査を支援するとともに、飼料等の生産資材については、指標となる暫定許容値を示し、放射性物質の検査を行うなど、適切な管理を行ってまいります。さらに、厚生労働省と連携して、農林水産物、食品の放射性物質の検査機器の整備などを進めてまいります。  第二に、安定的な農業経営を継続できる力強い農業の実現であります。  農業者戸別所得補償制度は、農業が食料の安定供給や多面的機能の維持という重要な役割を担っていることを評価し、意欲ある農業者が農業を継続できる環境を整える基礎的な制度であり、平成二十三年度は百二十二万もの農家及び集落営農の方々に参加いただきました。農業者、地方公共団体から、安定的に実施してほしいとの要請が多数寄せられているところであり、法制化に向けて検討を進めているところです。引き続き、本制度の安定的な実施に努めてまいります。  この農業者戸別所得補償制度により経営安定の基礎を確保した上で、各地域における人と農地の問題を解決し、五年先、十年先も世代交代しながら安定的な農業経営を続けていける体制を構築していくことが重要です。このため、各地域における農業者等の徹底した話し合いによる人・農地プランの作成、青年就農者の大幅な増大を図るための青年就農給付金や農の雇用事業、農地の集積を進めるための規模拡大加算や農地集積協力金、農地の大区画化等の農業生産基盤の整備などの措置を講じ、これらを活用しつつ、地域の実情に応じた的確な取り組みが円滑に進むよう、地道に継続的に取り組んでまいります。  さらに、今後の農業、農村の発展を考えたとき、女性の役割がさらに求められております。多くの女性が主体的に活動し、その能力を最大限発揮して輝くことができるよう、地域の人・農地プランの作成に当たっての女性の参画の要件化、各種補助事業における女性優先枠の設定などの支援を行ってまいります。  第三に、六次産業化による農山漁村の活性化であります。  農山漁村の六次産業化は、地域の資源を活用し、地元の働く場をつくることにより、今後の農山漁村の活性化を図る上での鍵になると考えております。  六次産業化を進めるためには、これまでにない加工、流通、マーケティング、経営管理等の新たなノウハウが必要であり、人材の育成、確保が重要となります。  このため、六次産業化に取り組んだ経験を持っている先達や輸出、観光の専門家などからボランタリープランナーなどとして協力していただき、地域における経営支援を充実します。  また、六次産業化を加速させるためには、人材に加えて、これまでにない資金が求められております。このため、農林漁業者等に出資等を行うことにより、成長資本の提供と経営支援を一体的に実施することができるよう、官民共同のファンドを創設する法案を本国会に提出しております。  輸出については、国内の安全確保に係る取り組みを海外に発信することにより、国際的な信認の回復に努めてまいります。また、国家戦略的マーケティングを再構築し、ジャパン・ブランドを確立します。これらの措置により、官民一体となって一層の輸出拡大に取り組んでまいります。  第四に、再生可能エネルギー生産への農山漁村の資源活用の促進であります。  就任以来、農山漁村における再生可能エネルギーの導入を農林水産業の振興と一体として進めていくべきであると申し上げてきました。  本年は、地域において両者の一体的推進を具体化していきます。  このため、農林漁業者主導で行う再生可能エネルギーの具体的な導入のモデル地区づくりなどを支援してまいります。また、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入を促進するため、土地利用の手続の簡素化、農林地等の権利移転を促進する計画制度の創設等を措置する法案を本国会に提出しております。  第五に、食の安全と消費者の信頼の確保であります。  農林水産業の発展には消費者からの信頼が不可欠であり、食の安全、安心を求める消費者ニーズに対応した生産、製造、流通体制を整えていくことが必要です。  このため、農林水産省は、国民の健康を守ることを第一に、後始末より未然防止の考え方を基本に、有害微生物、有害化学物質による食品等の汚染実態調査を進めてまいります。また、それらの科学的根拠に基づき指針を策定するなど、農場から食卓にわたり食品の安全性向上のための取り組みを推進してまいります。  また、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザについては、改正家畜伝染病予防法に基づき、今後の発生防止に万全を期してまいります。  経済連携については、昨年十二月に閣議決定された日本再生の基本戦略にもありますとおり、幅広い国々と戦略的かつ多角的に検討を進めてまいります。その際、農林水産業への影響に十分に配慮していくことが必要と考えております。環太平洋パートナーシップ協定については、政府として交渉参加に向けた関係国との協議を進めるとの方針を決めたところであります。関係国が我が国に何を求めるかをしっかりと把握し、国民の皆様への情報提供を行い、国民的議論が行われるよう努めてまいります。  また、WTOドーハ・ラウンド交渉については、多様な農業の共存を基本理念として、引き続き取り組んでまいります。  第六に、森林・林業再生であります。  豊かな森林と林業の再生を図るため、森林・林業再生プランを踏まえ閣議決定した森林・林業基本計画を着実に実行していくことが必要です。また、地球温暖化防止に向けて、引き続き森林吸収源対策を推進していくことが必要です。  このため、森林管理・環境保全直接支払い制度などによる路網整備とあわせた施業の集約化や搬出間伐への支援を行うほか、木材加工流通施設の整備等を推進してまいります。また、効率的かつ安定的な林業経営のために必要となるフォレスターや森林施業プランナーなどの人材を戦略的、体系的に育成してまいります。さらに、被災地においては、住宅や公共施設の再建に必要な木材を安定供給するとともに、地域で必要な熱、電気に木質バイオマス資源を活用することなどにより、環境負荷の少ない新しいまちづくりを推進してまいります。  先日開催した会議で、林野行政を担当する職員から、木造セールスマンとして、木造公共建築物の普及活動を展開しているという報告を受けました。このように現場主義に立って、関係省庁とも連携して、国民各層に森林づくりや木づかい運動、公共建築物等への地域材の利用拡大について働きかけてまいります。  また、国有林野事業について、民有林との一体的な整備保全を推進するとともに、債務を区分経理した上で、一般会計において実施するための法案を今国会に提出しております。  第七に、水産業再生であります。  本年は、新たな水産基本計画を策定する年であります。  まずは、漁船、養殖施設、加工施設の復旧や漁港の地盤沈下対策等の東日本大震災からの復興を進めることが最優先の課題です。その際、地域経済の核となってきた漁業と水産加工流通業の一体的な取り組みによって再生していくことが重要です。また、大震災の経験を生かし、拠点となる漁港の防災機能の強化などにも取り組むことが必要です。世界的に水産の資源状況は低迷しており、水産資源の管理を適切に進めることが重要です。本年度から開始した、計画的に資源管理に取り組む漁業者に対する資源管理・漁業所得補償対策を推進するなどにより、水産資源管理の強化、意欲ある漁業者の経営安定に取り組むことが必要となっています。  これらに加えて、加工流通業の持続的発展、安全な水産物の安定供給の実現など幅広い観点から検討し、新たな基本計画を策定します。  以上、農林水産政策に関する基本的な考え方を申し上げました。また、施策の展開に必要な法整備については、今後、御審議をよろしくお願いいたします。  本年は、食と農林漁業の再生の元年としなければなりません。農林水産業の再生が国政の真ん中に位置づけられるべきものと考えております。政務三役、そして農林水産省の全職員が一丸となって、積極的に現場の声を聞きながら、一歩一歩、地道に、かつ着実に農林水産行政を進めてまいります。  委員長を初め委員各位におかれましては、今後とも一層の御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)